第1章・序曲「ドラキュラ城・再び」

某ヒゲオヤジの登場するゲームの敵ほどではないが
またまた復活した「悪魔城」。
今回もまた、ドラキュラ伯爵をしばき倒すため
悪魔城へと近づく姿があった。
小雨が降る森の中を
1台の馬車が駆け抜けてゆく。
馬を駆るのは、精悍な顔つきの青年。
邪悪を払う青い服を身にまとい
腰には先祖伝来の聖なるムチを
携えている。
誰が呼んだか知らねども、誰もがみんな知っている(?)
最強のヴァンパイアハンターとうたわれる
「リヒター・ベルモンド」その人であった。
*   *   *
彼は6年前、恋人の「アネット」をドラキュラ伯爵に かどわかされ、彼女を助けるべく悪魔城に乗り込んだ。 苦難の道のりではあったが ドラキュラ伯爵を打ち倒し、 義妹「マリア・ラーネッド」と共に 無事にアネットを助けだした。 そうして、平和が訪れたのだが・・・
その5年後、つまり今から1年前。 再び「悪魔城」が復活した。 本来、「悪魔城」は100年に一度しか 復活することはない、といわれている。 しかし、暗黒神官「シャフト」により、この時にも 悪魔城は復活したのだ。 この時、真っ先に悪魔城に乗り込んだのが、 当時行方不明だったリヒターを探す旅をしていた 17歳の「マリア・ラーネッド」だった。 復活してあまりに早く乗り込んだせいか、 はたまた因果率の狂いによるものか、 マリアが乗り込んだ悪魔城には 城主であるべき者がいなかった。 勢い込んでしまったマリアは、 途中でリヒターに会うこともなく アルカードと対面することもなく 蔵書庫のジイサマにはそっぽを向かれ メデューサ姉には睨まれ 異端礼拝堂ではモンスターにつつきあげられ・・・ 腹いせに、 逆さ城中心部で実体を持たなくなった 暗黒神官シャフトを ぼてくりこかして 悪魔城を陥落させた、ということである。 その後、マリアは再び旅立っていったという・・・ 余談ではあるが その陥落した悪魔城にようやくたどり着き ボーゼンとしたリヒターの姿を 見たものがいたとかいないとか。
*   *   *
そうしてさらに1年が過ぎた。 つまり現在。 今度は行方不明になったマリアを捜すため リヒターは旅を続けていたわけだが・・・ その旅の途中 「悪魔城が復活した」との噂を聞き こうして向かっているところなのである。 リヒターが悪魔城に向かっているのには 2つの理由があった。 1つは、悪魔城に「マリア」がいるのではないか、 その真偽を確かめるため。 短期間で復活した「悪魔城」。 そこから流れてくる気配の中に、 リヒターは何か懐かしいものを感じとったのだ。 それがマリアのものとは断言できないが 確かめてみる価値はある。 そう、リヒターは考えたのである。 そしてもう1つは 「ドラキュラ伯爵の討伐」 ベルモンドの血の宿命ともいうべき 古より連綿と受け継がれてきた使命である。 (よもや、自分が生きているうちに  2回もその使命に携わろうとはな) 不幸な自分に悪態をつきつつも 彼の心の奥底には 再び闘いの中に身を投じることを喜んでいる 自分もいた。 (闘いの中でしか、己の血を感じられなくもある。  オレの心を真に満たしてくれるのは  やはりヤツとの闘いなのか・・・?) いや、そうではない。そんなはずはない・・・ リヒターは頭を軽く振り、 ほんの少し涌いた「闘いを求める心」を 振り払うかのように、馬にムチをいれた。 振り続く雨が次第に強さを増してきた。 (悪魔城はもうすぐだ) 近づいてくる悪魔城の邪悪な気配。 リヒターの駆る馬車は、引き寄せられるかのように 悪魔城へと向かっていった・・・
*   *   *   *   *
時を同じくして、 リヒターとは別の方角から 悪魔城に近づく一人の男の姿があった。 漆黒のマントに身を包み、愛用の剣を携えた 美しく端正な顔立ちの青年。 その容姿からはとても感じられない、 強大な闇の魔力を、内に秘めている。 彼の名は 「アドリアン・ファーレンハイツ・ツェペシュ」、 通称「アルカード」。 彼は ドラキュラ伯爵と人間の女性との間に生まれた ダンピール。ドラキュラ伯爵の息子である。 また、かつてリヒターの先祖である 「ラルフ・C・ベルモンド」そして 「サイファ」「グラント」と共に 当時のドラキュラ伯爵を打ち倒した男である。 彼は、その後自らの呪われた血を封ずるため 永い眠りについていたのだが・・ この度の悪魔城の復活により、 実に何百年ぶりかで目覚めてしまったのである。 例えるなら 目覚まし時計が手の届かないところで ひたすら鳴り続けている状態で 仕方なく起きてしまった、といったところか。 目覚めたアルカードはすこぶる機嫌がわるかったが 「悪魔城復活」というコトの重大さに気づき 愛用の装備で身を固めた上で こうして悪魔城に向かっているのである。 (父上・・・ やはり、闘わなければならない宿命なのか) アルカードの胸の内に、 数百年前のドラキュラ伯爵との闘いの記憶がよみがえる。 (できるなら、会いたくはないものだ・・・) 薄暗い森の中を、滑るように駆け抜けながら アルカードは静かにそして確実に、 悪魔城へと歩みを進めていった・・・
*   *   *
そして、外堀を軽やかに飛び越え
城内へ侵入したアルカード。

その前に立ちはだかる一つの影。
ドラキュラの腹心の部下、
死神「デス」であった。
デスは、アルカードの姿を認めると
ゆっくりと目の前におりてきた。

「これはこれはアルカード様。いったい何をしに
参られましたかな?」
「知れたことだ。そこを退いてもらおう。」
アルカードはデスを見据え答える。
「・・・ほう、ではあなた様も
 この城に起こったことを調べに来られたのですな?」
「・・・?」
アルカードは怪訝な顔をした。
デスは、それを気にせずに続ける。
「では、この場は一旦退きましょう。
 ゆめゆめ、油断なさらぬことです・・・」
デスはマントを翻し、飛び去ろうとする。
「待て・・! 死神。」
「? まだ何かご用がお有りで?」
「どうしたというのだ。本来のお前なら、
 オレをここで引き留めようとするはずだ。
 なぜ、あっさりとこの場を通す?」
デスは顔だけアルカードの方に向け、答える。
「では、逆にお尋ねします。アルカード様はなぜ、
 [今年]お目覚めになられましたかな?
 本来なら、1年前にお目覚めになられるはずでは
 ありませんでしたか?」
アルカードはしばし考え込む。
「・・・何が言いたいのだ。
 たしかにオレは今年に眠りから覚めた。
 それがどうしたのだ。」
デスは改めてアルカードの方に向き直った。
「その原因こそ、いまの城内にあるのでございます。
 ・・その前に。
 アルカード様は存じ上げておられますかな?
 この城は昨年にも復活していたことを・・・」
「!?」
アルカードの表情が険しくなる。
「オレは・・・寝坊したというのか!?」
空中でズッコける「デス」。
「・・・それはともかく。
 その時は何者かによって、城が崩壊してしまったのですが。」
「ベルモンドの者によってか?」
「いえ、ベルモンドではありませぬ。
 他の血統のハンターによるものと・・・。」
「ベルモンド以外か。」
アルカードの脳裏に「サイファ」や「グラント」のことが
浮かぶ。
「まさか・・・な。」
「心当たりでも?」
「いや。何でもない。続けろ。」
デスは一息おくと、再び話しはじめる。
「城を復活させたシャフトめが倒されたため
 次の復活は100年後だと、私めも考えておりました。
 しかしつい先日、突然城が蘇ったのでございます。
 そう、まるで時間が戻ったかのように・・・」
「時間が・・・戻った?」
アルカードは意外な言葉に、思わず聞き返す。
「左様。
 通常、この城の構造は復活の度に変化するのは
 あなた様もご存じのはず。
 しかしこの度の城の構造は、1年前とまったく同じなのです。」
「・・・ふむ。妙な話しだな。」
デスはうなずく。
「この事態がいかなる意味合いをもつのか、
 我々も調査を進めておるのですが・・・
 アルカード様も加わって頂けるなら調査がはかどります。
 よって、あなた様をここで止める理由はございませぬ。
 どうぞ城内へお進みくださいませ。」
アルカードは城内へ歩を進めようとしたが、
はたと立ち止まった。
「デスよ・・ よもや忘れているのではないのか?
 オレがこの城に来たという、その事実を・・・」
「『この城を消すこと』でございましょう?
 忘れてはおりませぬ。」
「それでもこのオレを通すというのか?」
「・・・この度のこと、おそらくドラキュラ様のご意志では
 ございませぬ。ならば、お静かに眠っておいていただきたい。
 それだけでございます。」
「そうか・・・。」
アルカードは改めて意志を固めるかのように、
マントをふわりと翻した。
「素直に通してくれたことには、礼を言うぞ。」
「は、ありがたきお言葉感謝致します。
 どうか、お気をつけて・・」

*   *   *
こうして、今宵も悪魔城に宿命の魂が集うこととなった。 近年にないハイペースで復活した悪魔城の謎とは・・・ リヒター、そしてアルカードの運命やいかに・・・? それは作者にもわからない。(←ダメじゃん)
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